■ プロフィール ■



藤間 静蘭
  日本舞踊藤間流師範
  日本舞踊協会会員

4歳より五城目町で日本舞踊の稽古を始める。
故二代目藤蔭季代恵師、故藤間汎師、藤間勘翠師に師事。
大学時代より東京の故藤間勘一郎師に師事し、新橋演舞場・国立大劇場・歌舞伎座で多くの舞台をふむ。
また地唄舞を故二代目藤蔭季代恵師に師事。

加賀谷 宗静
  茶道裏千家教授

◆◆◆ 私の思い ◆◆◆

次世代に繋ぐ心のよりどころ

 振り返りますと早いもので、私が日本舞踊と出会ってから半世紀以上が過ぎました。 4歳で故二代目藤蔭季代恵師から手ほどきを受けたのが始まりで、その後故藤間汎師、藤間勘翠師に師事。大学への進学を期に、東京御徒町の故藤間勘一郎師(今年5月、98才で亡くなられました)とのご縁もいただきました。 そのご縁から数えても40年。素晴らしい師匠と周囲の暖かい理解の元に踊り続けてまいりました。この事を思うと感謝の気持ちでいっぱいになります。

 長く踊り続けている間に多くの会の舞台を踏ませていただき、また自分でも主催してまいりました。特に自分で会を主催する時に考えましたのが、ふだん日本舞踊に触れることのない、他の分野の方々にもご覧いただきたいということでした。そこで日本舞踊というジャンルを越え、居合いや詩吟、あるいはバレエの先生方にも参加していただくような舞台を作ってまいりました。邪道と言われることもございましたが、日本舞踊のすばらしさを幅広く多くの方に知っていただくことの一助になったと自負しております。
 こうした活動の中、今一番に思うことは日本の伝統文化を次世代に繋いでいかなくてはならないということです。ジャンルにこだわらない舞台を多くの方に見ていただくのも大事なこと。しかし、それではただ見ておもしろかったで終わってしまいがちです。そこから一歩先に進んで、それを身につけていただくことこそ大事なことだと思うのです。
 ITが発達し企業は多国籍化する現代。まさに時代の変わり目としかいいようのない激動期となっています。こういう時代だからこそ足下をしっかりと踏みしめなくてはならないと思います。自分のよりどころとなるものをしっかりと持っていなくては外に羽ばたいて行くこともできません。「自分の足下」「よりどころ」、日本の伝統文化はまさにそこに応えてくれるものです。自国の文化を愛することなく他国の文化を愛することはできません。

 少し話が大きくなってしまいました。
 私は幼稚園児から大人まで日本舞踊を教えていますが、特に子どもたちには稽古の合間にお茶やお花の手ほどきもしています。その目的は茶道、華道をしっかりと教えこむということではなく、基本の所作を知ってもらう、その場の空気に触れてもらうということ。子どもたちに日本舞踊を中心として広く日本の伝統文化に親しんでもらいたいのです。親しみの中から愛が生まれ、それはやがてこの子たちの心のよりどころになることでしょう。
 古くから守り受け継がれて来た文化は、多くの先人の手によって磨き上げられてきました。それはまさに得難い宝物に他なりません。 この宝物を次世代に受け渡していくことは、私を育んでくださった師匠や周囲の方々への恩返しにもなると、心を新た取り組んで行きたいと思っております。

                平成25年6月8日  藤間静蘭